【はじめに:熊本にあるが、加藤家でなく、細川家が作った水前寺成趣園】
(本記事にて使用している写真は、2016年の熊本地震の前年、2015年に撮影したものです)
本日は、熊本県・熊本市にある、水前寺成趣園をご紹介します。庭園好きの私ですが、「松は栗林公園」、「芝は水前寺」のイメージが強く、訪問させて頂く事が長年の悲願でした。(上記写真は、自身でつなぎ合わせ作成していますので、おかしな部分があります事、ご了承ください)
熊本と言えば、熊本城と加藤清正。しかし、こちらの庭園に、清正公の銅像は見当たりません。代わりに、細川氏の銅像があります。熊本城の記事でも記載しましたが、加藤家が、熊本を治めていたのは、1600年代初めの30年程。熊本城を築城したのは、加藤清正ですし、熊本の名付け親も加藤清正(その前は、隈本と言ったらしいです)。しかし、加藤家の統治の後、江戸が終わるまで熊本を治めたのは、細川家。水前寺成趣園を作庭したのも、細川家だそうです。
【東海道と琵琶湖をモチーフとしたと言われる、芸術性の高い庭園】
写真にもありますが、熊本藩細川家、初代藩主の細川忠利が、1636年に作庭を開始し、孫の3代目藩主、細川綱利の時(1671年)に、ほぼ今の形になったとの事。故に350年間、今と同じような庭園が受け継がれている事になります。350年前に、これだけ写実的な庭園を造った事は、本当に驚かされます。宗教的要素を色濃く残す日本庭園が多い中、熊本にありながら琵琶湖や東海道をモチーフに作庭する発想は、中々出てこないと思いますし(まっある意味、琵琶湖も富士山も宗教的要素の強い湖・山だったことは確かですが・・・)、芝をこれだけふんだんに使って、芸術性の高いお庭に仕上がっている事にも驚きを隠せません。本当に芸術作品と言うべき、庭園だと思います。山梨県北杜市の出身者として、しいて言えば、「富士山は山梨県側からの富士をイメージしてほしかった」と言う事ぐらいです。
【阿蘇の伏流水を活かした庭園】
そんな水前寺庭園の特徴の一つは、水が非常に綺麗と言う事。阿蘇の伏流水が湧き出していて、綺麗な水が絶えず、循環しているかららしいです。火の国熊本なんていいますが、水の国でもあるんですね。阿蘇山は、大規模な噴火を何度も起こしており、それよって発生した、火砕流が層になっているらしいです。この層にそって、水が流れてくるので、市内にも、綺麗な水が大量に湧いているとの事。池には、錦鯉が沢山いるのですが、水が綺麗なせいか、生き活きと泳いでいる様に見えますし、色も鮮やかに見えます。恐らくこれは、気がするのではなく、綺麗な水のおかげで、本当にそうなんだろうと思いました。そしてこの池は、琵琶湖をイメージした池らしいです…。地上視点では、琵琶湖から富士山は見えませんが、阿蘇の伏流水を利用し、琵琶湖に見立てた美しい池を、「鳥観図のイメージ」で楽しむべきだと、思った次第です。
【管理が行き届いた芝の富士を望む庭園】
そしてもう一つ心を奪われたのが、芝のお手入れ。芝は刈り込まれ、非常に綺麗な状態を保っています。この手入れされた芝があるからこそ、水前寺成趣園の富士の美しさが際立つんだろうと思いました。我が家にも、わずかばかりの芝庭があるのですが、これは本当にお手入れが大変。季節になると、2-3週間に1回は刈り込まないとなりません。いくら仕事と言え、これだけの大きな庭園の芝。しかも平らではない芝の富士を、これだけ綺麗に保っているのは、敬服いたします。関係者の庭園に対する愛情があればこそ、ここまで綺麗な状態を保っているんだろうと思います。しかも、350年間。最初から芝が張られていたのか、それともあるタイミングから芝になったのかは、正直わかりませんが、仮に機械もない時代に、芝の刈り込みをしなければならないとなると、これは本当に大人の愛情がないとできないと思います。
【最後に】
これだけの規模の庭園で、これだけの芝が植えられ、且つ常に美しい状態を保っている、水前寺成就園。九州熊本もにありますが、東海道をモチーフにしたした、ユニークな、水前寺成就園。愛しつけ継がれてきた、芝の富士の庭園。阿蘇の伏流水で、色つやの美しいに錦鯉が泳ぐ庭園。こんな、水前寺成趣園に、皆さまも足を運ばれ、お庭の芸術鑑賞をしてみては、如何でしょうか?
尚本ブログでは、東京旧古河庭園、東京椿山荘、神戸相楽園、京都無鄰菴、高松栗林公園、熊本水前寺成就園、山梨恵林寺庭園、甲府常磐ホテルの庭園、平泉毛越寺庭園、名古屋徳川園、二条城二の丸庭園、川越喜多院の紅葉山庭園/中院の庭園、熱海の起雲閣、旧芝離宮恩賜庭園、小石川後楽園、清澄庭園、浜離宮、六義園、新宿御苑、日本三名園:金沢兼六園・岡山後楽園・偕楽園等、全国各地の庭園も紹介しており、「日本庭園のカテゴリ分け(庭園分類)」に関しても記載しております(更新中あり)ので、下記一覧表をご活用いただき、ご参照頂けますと幸いです。