【はじめに】
こちらのページでは、「『〇〇(式)庭園』と言う、庭園の基本の分類を抑えた上で、庭園の楽しみ方につき考察を加えさせて頂こう」と思います(最下部に庭園分類一覧表あり)。
(歴史好き・城好きでもありますが…)庭園好きの私達夫婦は、都内や旅先で、庭園巡りの大人散策をする事がしばしあります。木々の美しさや、枯山水の景色、滝の音や水の静けさが感じられる水の流れとそれを受ける池泉、特にお庭に関する知識がある訳でもありませんが、心落ち着く空間は、お気に入りの場所で、同じ庭園でも、季節によって(時には時間や天気によって)見える景色の違いがあり、いつ行っても楽しむ事が出来ます。
そんな私達夫婦ですが、「庭園に関する知識がない」とは言っても、「大名庭園」、「浄土式庭園」、「寝殿造/書院造庭園」「池泉回遊式庭園」、「禅庭」と言った様な言葉は聞いた事はあります(と言うより、こういった単語を聞いた事があるだけです…)。そして思ったのです。「これらの単語の意味する所は?、定義は?」、「日本庭園ってしっかり分類できるのか?」、「『大名庭園』と『池泉回遊式庭園』って違うのか?」等々。言い換えますと、日本庭園を包括的に理解するにあたり、「様々な疑問が出てきた」と言う事です。
こちらのページでは、日本庭園をより楽しめる様に、これらの「私達夫婦が感じた疑問」を解決すべく、「〇〇(式)庭園」のフレーズを出来る限り洗い出し、それらの概要を理解し、日本庭園を出来る限り分類していこうと思った次第です。以下に、「それぞれ、個人的に理解した定義」と「それに基づき、これまで訪問させて頂きました日本庭園の分類」を出来る限り記載させて頂きます。日本庭園の楽しみ方における一つの切り口として、皆様にも参考にもなれば幸いです。
(先に分類の結論を記載しますと、「日本庭園を包括的に分類するのは至難の業で、分類するよりも庭園それぞれの特徴を捉えるために「〇〇(式)庭園」のフレーズ(分類)を活用する事で、芸術作品として、美術館で絵画を拝見する様に庭園を楽しむべき」と言う事が結論になった事、先に記載します。庭園の包括的分割方法にチャレンジされている方もいるかもしれませんので…)
【「〇〇(式)庭園」の洗い出し】
早速ですが、様々ある「〇〇(式)庭園」の洗出しと、それぞれの概要を理解すべく、以下にまとめさせて頂きます。(尚、例に挙げさせて頂いている庭園は、個人的思考で恐縮ですが、「これまでお伺いした庭園」 or 「今後お伺いすべくリストアップしている庭園」を挙げて折ります…)
■「どう活用するのか?(楽しむのか?)」の分類
・鑑賞式庭園
基本的に室内から鑑賞する事で、楽しむ庭園。尚鑑賞する対象は、池泉・苔庭・枯山水等(組み合わせも含め)様々で、寺院や美術館で見かける印象を持っています。
例:建仁寺/潮音庭・足立庭園美術館
・舟遊式庭園
庭園内の池泉に舟を浮かべ、景色や風情を楽しむ庭園。「舟遊び」+「庭園」とイメージすると、平安時代の貴族が浮かび、寝殿造庭園・浄土式庭園との関連を想像してしまいます。
・回遊式庭園
園内を散策しつつ、変化する景色を楽しむ庭園。大きめの日本庭園、特に大名庭園は、この形式がメジャーと認識しています。
例:各大名庭園
■「何をメインの構成要素にした庭園なのか?」の分類
・池泉庭園
池泉がメインで、水を近くに感じつつ、その景色を楽しむ庭園。
例:各大名庭園
・枯山水庭園
水を使わず、石や砂利で水を表現し、自然の風景を再現する事により、見る側はイマジネーションで楽しむ庭園。
例:建仁寺/大雄苑・銀閣寺(慈照寺)庭園
・築山林泉庭園
水(池泉/小川/滝)や築山、木々を配置し、様々な自然の風景を凝縮した庭園。
例:各大名庭園、清澄庭園(Wikipediaには ”回遊式林泉庭園” とありますが…)
・露地庭園 / 茶庭
茶室まわりの庭園の事を言い、縮景式庭園や枯山水を中心に置き、茶室が配置され、道々で、「わびさび」を感じる庭園。
例:白鳥露庭園の一部・相楽園の一部・江戸東京たてもの園の会水庵
■「各庭園におけるの作庭意図・作庭者その物・歴史的背景は何か?」による分類
・縮景式庭園
砂利で表現された海・川や石を山に見立て自然を表現する枯山水、池泉や木々・築山等で風景等を縮小して表現し、景勝地等をモチーフに作庭された庭園。樹木はなく小さな石や砂、苔等で構成されるケースもある。
・寝殿造庭園
中央に配置された寝殿造の建物と共に、池や築山、橋、石や木、水辺の植物なども配置する事により、庭園全体が自然の風景を見出すように作庭された庭園。
例:紫式部公園
・浄土式庭園
極楽浄土をイメージした、宗教的色合いを含む庭園。水や砂利、石等を使い海や川、岩が並ぶ山などを表現し、石や木を配置して自然の景観を模倣しており、池の前には寺院建築がなされている(いた)。
例:毛越寺庭園・平等院庭園
・書院造庭園
書院(書斎を兼ねた居間の中国風の呼称)と言われる書院造の建物と共に作庭された庭園。池や滝、橋などが設けられ、石や木などが配置され、池の中には小島が設けられるケースが多く、花や草木も植えられるケースもあれば、枯山水を活用するケースもある。
例:二条城二の丸庭園・銀閣寺(慈照寺)庭園
・蓬莱式庭園
不老不死を願う道教的な思想・蓬莱神仙思想に基づいて作庭され、不老不死の仙人が住む蓬莱山(蓬莱島)や、長寿の象徴である鶴や亀を岩などを使い鶴島や亀島として表現している庭園。
・禅庭
寺院等に多く見られる庭園で、夢窓国師による庭園を代表とする禅の世界感から「わびさび」や「幽玄」を見出した庭園。
・大名庭園
江戸時代に、大名が策定した大規模な庭園で、回遊式池泉庭園のケースが多い。
上記の通りですが、「様々な切り口で日本庭園を分類する事が出来るんだなー」と改めて思った次第で、また大名庭園の多くは、回遊式であり、池泉/築山林泉庭園であり、蓬莱式庭園の要素も持っており、「庭園の分類方法は様々な切り口があるが故に、庭園によっては『分類の掛け持ち』も多く存在するんだなー」と理解させて頂いた次第です。
【「これまで訪問させて頂いた庭園」の分類】
これまでに「庭園の分類」に付き、全てではありませんが、分類の種類とその概要を記載させて頂きました。様々な分類方法があり、庭園によっては「分類の掛け持ち」もある理解をさせて頂きましたが、こちらの段落では、私達夫婦がこれまでに訪問させて頂きました庭園を、その代表的な側面に基づいて(個人的主観ですが…)、それぞれを独断と偏見で分類させて頂きたく存じます。
・浄土式庭園:毛越寺庭園
岩手県の平泉にある、毛越寺庭園は、池泉があるので、池泉庭園の側面もありますし、そこに船を浮かべ楽しんだ側面(=舟遊式庭園)もあると思いますが、代表的な側面は、「極楽浄土をイメージして作られた庭園=浄土式庭園」の側面が最も強い側面だと思う庭園です。現在では、建物はほぼなく、池と岩(石組)を拝見しつつ、池の周りを散策する回遊式庭園の側面が強いですが、かつてここにあった建物とそれによってイメージされた極楽浄土に思いを馳せつつ散策させて頂く事が、大人散策の近道ではないかと思った次第です。
・禅庭:天龍寺庭園 / 恵林寺庭園
京都・天龍寺の庭園と山梨・恵林寺の庭園は、臨済宗の禅僧・夢窓疎石の作庭による庭園との事で、池や枯山水があるので、池泉庭園・枯山水庭園の側面等もあると思いますが、「禅庭」と言うべき庭園だと思っております。派手さがない、しかし「わびさび」・「幽玄」を感じさせる空間は、寺院の庭園にふさわしく、心を落ち着かせる事が出来る庭園で、大人が訪れるべき場所だと思っております。
・縮景式庭園:白鳥庭園 / 水前寺成就園
世界デザイン博覧会のパビリオン「日本庭園」として、整備された名古屋の白鳥庭園は、東海三県を中心とした中部地方の地形をモチーフにしている庭園と言われている様です。また、熊本の水前寺成就園は、芝の富士が美しい事で有名ですが、東海道の景色をモチーフにした庭園(細川家の大名庭園)と言われています。池泉がありその周囲を散策しながら景色を楽しむ事が出来るので、回遊式・池泉庭園の側面も強いと思いますが、個人的には「縮景式庭園」の分類が一番こちらの庭園のカラーを伝える事が出来るのでないかと思っております。
・舟遊式庭園:小石川後楽園 / 栗林公園
大名庭園の手本との言われる小石川後楽園と松が美しい栗林公園は、大名庭園の代表格であり、大きな池泉(池泉庭園)の真ん中に、蓬莱島(蓬莱式庭園)を配し、築山や多くの木々が植えられた(築山林泉庭園)庭園で、円月橋(偃月橋)も備え(縮景式庭園)、様々な顔をもち、分類する上でも、いくつも掛け持ちが発生する庭園だと思っております。そんな状況ではありますが、「徳川家光も舟を浮かべ楽しんだと伝わる小石川後楽園」と「現在舟遊びが出来る栗林公園」をあえて、「舟遊式庭園」に分類すもの面白いと思った次第です。
・大名庭園:徳川園 / 旧芝離宮恩賜庭園 / 玄宮楽々園 / 兼六園 / 六義園
徳川園 / 旧芝離宮恩賜庭園 / 玄宮楽々園 / 兼六園 / 六義園 は、私達夫婦が好きな大名庭園。上記にも記載しましたが、大名庭園には、様々な顔(池泉・回遊式庭園等)があるので、どう分類すれば良いか正直わかりませんが、上記の小石川後楽園・栗林公園・水前寺成就園等も含め、「様々な要素・切り口が凝縮された、大名弁当の様な庭園が、『大名庭園』」と理解させて頂くべきかと思った次第です。
頑張って、庭園の分類をさせて頂いたつもりではおりますが、庭園の要素やそのスコープ、見方は様々あり、やはり庭園を単純に分類するのは、至難の業だと改めて思った次第です。しかし同時に、その庭園が持つカラーはそれぞれあり、様々な切り口(分類方法)を通じて、庭園を理解する事が出来るのも事実だと思い、「〇〇(式)庭園」という分類方法は、「分類」として活用するよりも、「それぞれの庭園の良さやカラー(特徴)を認識する為に活用する切り口」と思った次第です。
【最後に】
以上が、「〇〇(式)庭園」と言う、庭園の基本の分類を抑えた上で、庭園の楽しみ方につき、考察を加えさせて頂いた内容になります。
庭園には、それぞれのカラー・良さ・特徴があり、それを理解する為の切り口が「〇〇(式)庭園と言った分類方法」であると理解させて頂きましたが、同時に思った事があります。それは、「日本庭園は、自然(水・木々・山々)・日本の景観・「わびさび」/「幽玄」を感じさせてくれるオブジェ等を通じ、日本文化の良さや宗教感を感じさせてくれる、大人散策スポットに間違いない」という物です。庭園は、日本の長い歴史と共に発展し、変化し日本の美と文化を象徴する空間になった訳ですから、当然と言えば当然ですが、その中に身を置いて、心静かに日本文化と歴史を感じ、思いを馳せつつ、園内を散策させて頂く(時には眺めさせて頂く)事は、大人の贅沢な時間だと改めて思いました。
皆様も、大人の贅沢な時間を更に有意義にすべく、「〇〇(式)庭園の分類」を少しだけ意識し、その庭園のカラーを理解し、最終的にはその庭園の持つ文化や歴史、そして日本文化の美を感じるべく、庭園の大人散策に出かけてみてはいかがでしょうか?
尚本ブログでは、東京旧古河庭園、東京椿山荘、神戸相楽園、京都無鄰菴、高松栗林公園、熊本水前寺成就園、山梨恵林寺庭園、甲府常磐ホテルの庭園、平泉毛越寺庭園、名古屋徳川園、二条城二の丸庭園、川越喜多院の紅葉山庭園/中院の庭園、熱海の起雲閣、旧芝離宮恩賜庭園、小石川後楽園、清澄庭園、浜離宮、六義園、新宿御苑、日本三名園:金沢兼六園・岡山後楽園・偕楽園等、全国各地の庭園も紹介しており、「日本庭園のカテゴリ分け(庭園分類)」に関しても記載しております(更新中あり)ので、下記一覧表をご活用いただき、ご参照頂けますと幸いです。