【はじめに】
こちらのページでは、「江戸期以前から存在する『現存12天守』でもありますが、更に『国宝に指定された5つのお城(=国宝5城)』に焦点を絞り、その概要と見所に付き記載」させて頂こうと思います。
そもそもですが、皆様は「国宝5城」、もしくは「国宝5天守」なるワードを聞いた事はございますでしょうか? お城好き、歴史好きの方であれば、多くの方が耳にした事はあると思い、それぞれのお城に関し、詳しくご存じな方も多いと存じます。日本100名城や続日本100名城、国宝5城、現存12天守、現存4御殿、三名城、三大山城、三大湖城、三大水城(海城)、三大連立式平山城、三大平山城、五大山城 / 五大山岳城と言った様な、お城のカテゴリ分けが存在しますが、「現存12天守」は、「その中で主役のお城」と思い、「国宝5城」は、「主役の中の主役」と言ってよいと思って折ります。
こちらのページでは、そんな「お城の中の主役の中の主役である『国宝5城(国宝5天守)』に絞り、それぞれのお城の概要を含め、大人散策情報を記載」させて頂きますので、以下ご参照頂けますと幸いです。
【国宝5城(国宝5天守)とは?】
そもそもですが、皆様は、「国宝5城とは?」 or 「国宝5天守とは?」と質問されたら、どの程度の回答が出来ますでしょうか? 私の場合は、現存12天守同様、「『国宝5城(国宝5天守)』と言われるお城の名前と所在地」を回答する程度の知識でしたので、まずは、その基本情報から抑えさせて頂きます。最初に、以下の一覧をご参照ください(現存12天守・国宝5天守・現存4御殿との切り分けが分かるよう、これらも一覧に組み込みました)。
No. | 城名 *天守築城年* | 所在地 | 国宝5天守 | 現存12天守 | 現存4御殿 | |
4 | 弘前城 *1810年* | 青森県 | 弘前市 | ● | ||
19 | 川越城 | 埼玉県 | 川越市 | ● | ||
29 | 松本城 *大天守:1615年・乾小天守:1591-92年* | 長野県 | 松本市 | ● | ● | |
36 | 丸岡城 *1624年-1644年* | 福井県 | 坂井市 | ● | ||
42 | 掛川城 | 静岡県 | 掛川市 | ● | ||
43 | 犬山城 *1601年* | 愛知県 | 犬山市 | ● | ● | |
50 | 彦根城 *1606年* | 滋賀県 | 彦根市 | ● | ● | |
53 | 二条城 | 京都府 | 京都市 | ● | ||
59 | 姫路城 *1601年* | 兵庫県 | 姫路市 | ● | ● | |
64 | 松江城 *1607年* | 島根県 | 松江市 | ● | ● | |
68 | 備中松山城 *1681年* | 岡山県 | 高梁市 | ● | ||
78 | 丸亀城 *1660年* | 香川県 | 丸亀市 | ● | ||
81 | 松山城 *1852年* | 愛媛県 | 松山市 | ● | ||
83 | 宇和島城 *1666年* | 宇和島市 | ● | |||
84 | 高知城 *1747年* | 高知県 | 高知市 | ● | ● |
多くの皆様がご存じのお城の名前が並んでおり、江戸時代から残る現存12天守の中でも、姫路城・松本城・彦根城・松江城・犬山城は、国宝であり、高知城には、現存4御殿のうちの1つも存在している事、ご理解いただけるのでないかと思います。
では次の質問ですが、「そもそも国宝とは?」何でしょうか? 少し前の話になりますが高知城にお伺いした際「国宝 高知城」なる石柱を拝見した事があります。上記一覧にある通り、高知城には、現存12天守と現存4御殿が本丸の中に存在する日本唯一の城郭で、確かに国の宝。個人的には、国宝でよいと思いますが、上記一覧の通り、残念ながら国宝ではありません…。勝手に国宝を名乗っている訳でもないと思うので、Wikipediaの力を借り調べて見ますと、「国宝」の項目に以下の様にありました。
国宝(こくほう)とは、日本語の第1義には、国の宝。第2義には、近代以降の日本において文化史的・学術的価値が極めて高いものとして法令に基づき指定された有形文化財を指し、具体的には、重要文化財のなかから特に価値の高いものとして指定した建造物、美術工芸品などをいう。※以下、本項は第2義について解説する。
国宝(第2義)は、日本の文化財保護法によって国が指定した有形文化財(重要文化財)のうち、世界文化の見地から価値の高いもので類いない国民の宝たるものであるとして国(文部科学大臣)が指定したものである(文化財保護法第27条第2項)。建造物、絵画、彫刻、工芸品、書跡・典籍、古文書、考古資料および歴史資料が指定されている (略)
https://ja.wikipedia.org/wiki/国宝
日本の宝として「重要文化財」が指定され、更にその中からとりわけ価値の高い物を「国宝」に定めているという事の様で、簡単に言ってしまうと『「宝の中の宝」=「国宝」』と理解させて頂きました。お城の世界に当てはめて考えますと、『「現存12天守」=「重要文化財」=「国の宝」』ですが、更にその中からえりすぐって『「姫路城・松本城・彦根城・松江城・犬山城」=「重要文化財 & 国宝」=「宝の中の宝」』といった理解をさせて頂きました。
では、重要文化財の高知城になぜ「国宝 高知城」といった石柱がある(あった?)のでしょうか? この辺りは、上記引用いたしました Wikipedia の「国宝」の項目をよみすすめると納得できる記載がありました。
(略) 「旧国宝」と「新国宝」
「国宝」という語の指す意味は文化財保護法施行(1950年)以前と以後とでは異なっている。文化財保護法施行以前の旧法では「国宝」と「重要文化財」の区別はなく、国指定の有形文化財(美術工芸品および建造物)はすべて「国宝」と称されていた (略)
1929年(昭和4年)には古社寺保存法に代わって国宝保存法が制定され、同法は文化財保護法が施行される1950年(昭和25年)まで存続した。古社寺保存法および国宝保存法の下で指定された「国宝」は1950年時点で宝物類(美術工芸品)5,824件、建造物1,059件に及んだ。これらの指定物件(いわゆる「旧国宝」)は文化財保護法施行の日である同年8月29日付けをもってすべて「重要文化財」に指定されたものと見なされ、その「重要文化財」の中から「世界文化の見地から価値の高いもの」で「たぐいない国民の宝」たるものがあらためて「国宝」に指定されることとなった。(略) 「新国宝」の初の指定は1951年(昭和26年)6月9日付けで実施された。
以上のように「旧国宝」「新国宝」「重要文化財」の関係が錯綜しているため、「第二次世界大戦以前には国宝だったものが、戦後は重要文化財に格下げされた」と誤って理解されることが多い。旧法(古社寺保存法、国宝保存法)における「国宝」(旧国宝)と新法(文化財保護法)における「重要文化財」は国が指定した有形文化財という点で同等のものであり、「格下げ」されたのではない。また、文化財保護法によって国宝(新国宝)に指定された物件のうち、重要文化財に「格下げ」された例は1件もない。
https://ja.wikipedia.org/wiki/国宝
つまり、高知城は当時の法律で「重要文化財」=「国宝」であり、今現在も「重要文化財」で、国の宝である事は変わりなく、「ただ『新法における国宝』には選出されなかった」と理解させて頂いた次第です。
こうして見てみますと「高知城に国宝の石柱があった謎」が理解できたわですが、同時に「現存12天守とその中から、新法により選出された国宝5城との違いはどこにあるのか?」といった新たな疑問が出てきてしまいました…。しかしながら、この疑問に対する明確な答えを見つけることはできませんでした。『「現存12天守」=「明治期前から存在する天守」』で、その事実をもってして「現存12天守」なのですが、『「国宝」に関しては、その基準が明文化されてはいない』と理解した次第です。故に、ここからは個人の見解となりますが、上記一覧を見て明確な違いは、「建造年」。現在の国宝5城の天守の建造年は、すべて江戸幕府の開府前後が基準になってりる様に見えてします。2015年に「松江城の天守がいつ建てられたのかが明確になった」ことで(天守建造1607年)、「国宝指定」がかなった事を考えると、次は「丸岡城 (建造年1624年-1644年)」と推察してしまい、「まだ明確に『建造年』が特定されていない、国宝以外で最古と目される(かもしれない)お城」が、「建造年」が明確になった段階で、国宝に指定されるか否かがポイントだと思ってしまった次第です…。(さらに個人的願望を記載するのであれば、「松本城の世界遺産登録」ですが…)
【それぞれの国宝5城】
上記、「『国宝5城(国宝5天守)』の概要」を抑えさせて頂きましたので、こちらのパートでは、それぞれのお城を見所も含め、見て行きたいと思います。なお、それぞれのお城に付き、別記事で詳細情報も記載しておりますので、併せてご参照頂けますと幸いです。
■松本城 (長野県松本市 建造は、大天守:1615年・乾小天守:1591-92年で、存城時に再建・改築)
黒い漆の壁が美しい国宝・松本城。天守群は、石落とし・狭間とかなり実践的な装備もあり、戦国を連想させる作りになっています。一方、その中の月見櫓だけは、「徳川家光が、京に上洛した帰りに、善光寺に行きたいと言っているから、そのタイミングで来るもしれない…」と言って、接待用に作られた時代背景もある様で、赤い高欄が設置された、なんとも風流な感じで、戦と平和が融合するお姿に見えるお城です。
規模間のある複合連結式の天守群の天守群は壮観で、黒い壁に赤の高欄が生える姿も独特な雰囲気を醸し出しています。松本市内の風情ある通りや湧水・美術館/博物館めぐりと併せて大人散策すべきお城だと思います。
■犬山城 (愛知県犬山市 建造は1601年で、存城時に再建・改築)
犬山城は、つい最近まで、個人所有のお城だった様で、現在の所有者としては、財団法人になっているようですが、その理事長が、成瀬淳子氏。故に、まさに姫君が理事長をなさっているお城と理解しております。
城下町から見た天守、木曽川越しに見た天守、凛とした佇まいが、季節を通じて美しく、国宝にふさわしいお城で、城下町も風情があり、麓の神社には、千本鳥居をそなえた三光稲荷神社等もあり、日本らしい風情を出していて素敵なエリアです。400年ほどの歴史を持つ犬山城は、その周辺環境・その歴史も含め、楽しむべきだと思っており、ちょっと脚を延ばすと明治村もありますので、併せて大人散策を楽しむべきだと思います。
■彦根城 (滋賀県彦根市 建造は1606年で、ほぼ創建当時のままを維持)
徳川幕府の側近中の側近で、大老も輩出した、名門井伊家の居城・彦根城。その割に天守としては、やや小ぶりな印象を持ちましたが、外観はとても400年たっている様には見えません。しかし、天守は勿論、長浜城から移築と伝わる天秤櫓(天秤櫓の手前の橋の下を通らないと、本丸にたどり着けない工夫)等、城郭全体、構造物内部を拝見すると、歴史の重みを感じられずにはいられないお城です。天守閣からの眺めも抜群で、(石田三成の居城であった)佐和山城址、琵琶湖は勿論、彦根市街、伊吹山等を一望できます。
「ひこにゃん」とたわむれるのも良いですが、国宝天守を借景にした玄宮楽々園・近江牛も、併せて楽しむべきエリアだと思った次第です。
■姫路城 (兵庫県姫路市 建造は1601年で、ほぼ創建当時のままを維持)
西国将軍とも言われた「池田輝政」の築城と伝わる姫路城。現存12天守である事は勿論、国宝でもありますが、同時に世界遺産のお城です。池田氏のイメージが強い姫路城ですが、「池田氏の統治は15年程」の様。一方、姫路城の天守群としては、400年以上の歴史を持ち、お城としては、室町時代から存在するお城で、羽柴秀吉・黒田官兵衛も居城としたお城になります。別記事で紹介しました「中国大返し」の舞台の1つにもなったお城と言う理解でもあり、『現存する巨大城郭・「世界遺産」兼「国宝」兼「現存12天守」である「姫路城」は、「正に日本のみならず、世界の宝」』と言うべきお城で「日本No.1のお城」だと思った次第です。
■松江城 (鳥取県松江市 建造は1607年で、存城時に再建・改築)
松江城の天守は、1607年に堀尾氏によって建造され、400年ほどたった現在でも、その雄姿を拝見できる山陰地方で唯一の現存天守で、且つ国宝5天守のお城です。また、天守からは宍道湖を望むことができる様で、日本三大湖城でもある様です。松江城と言うと、個人的には「堀尾氏」のイメージが強いのですが、「堀尾氏の統治は30年ちょっと」と言うのは、少々意外な印象をお持ちの方も多いと思います。人柱の伝承等も逸話の残る松江城は、天守もですが、その歴史に思いを馳せつつ、大人散策すべきスポットだと思っており、少し距離もありますが、庭園で有名な足立美術館や、日本神話の地・出雲大社にも脚を延ばしたいエリアと認識しています。
【最後に】
以上が、「江戸時期以前から存在する『現存12天守』でもありますが、更に『国宝に指定された5つのお城(=国宝5城)』に焦点を絞り、その概要と見所に付き記載」させて頂いた内容になります。
別記事記載の「現存12天守」のページでも記載しましたが、1940年代までは、現在の現存12天守と併せて、20城の天守が現存していた様です。しかし、戦争や火災で焼失してしまった(水戸城・大垣城・名古屋城・和歌山城・岡山城・福山城・広島城・松前城)事は、大変残念な事ですし、ちょっと前には、沖縄の首里城の火災もテレビで目にしました。有形の物なので、いつかはなくなってしまうのかもしれませんが、「国宝5城:姫路城・松本城・彦根城・松江城・犬山城」は、勿論ですが、「高知城・宇和島城・備中松山城・松山城・弘前城・丸亀城・丸岡城」も、(勿論現存12天守だけではありませんが…)日本の宝であることは間違いないので、これからも大切にして行くべきだと改めて思った次第です。そして、個人的願望として、「丸岡城 の国宝指定」と「松本城の世界遺産登録」を期待しつつ、今後もお城の大人散策を楽しませて頂こうと思った次第です。